Rooms & Dreams Interview with Naomichi Sato

部屋は当たり前に自分が「居る場所」。
だから自分で手を入れて
変化を楽しんでいます。

沖縄・南城市。穏やかな島時間が流れる住宅地に佇む平屋造りの一軒家。ここは、陶芸家・佐藤尚理さんのギャラリー兼自宅。ギャラリーにならぶ、まるでアート作品のような器の数々は試行錯誤をくり返しながら、今の形になった。部屋も同様、家族のライフスタイルの変化に寄り添うように間取りを変え、表情を変え、変化しつづけてきた。“自分の欲しいものをつくりたい”という想いがものづくりに対する情熱の原点という佐藤さんに、これからも変わりつづけていく作品と部屋、そして夢の話をうかがった。

佐藤尚理
佐藤尚理/陶芸家
陶芸家・造形作家。長野生まれ。沖縄県立芸術大学彫刻科を卒業後、同大学彫刻科の助手を経てドイツへ留学。帰国後、かねてから興味のあった陶芸活動をスタート。現在は、沖縄県南城市の自宅に併設する工房「うつわ ボノホ」にて創作活動ならびに展示販売をしている。パステルカラーのドット模様などユニークな作品を多く発表し、工房には全国からファンが訪れる。
お家のこと ー平屋造りの建物は趣があって素敵ですね。 典型的な沖縄の住宅です。しばらく空き家になっていたので住むには改修が必要だったのですが、知人でもあるオーナーに「リフォームは自由にやっていいよ」って言われて……。住みはじめて7年間で随分と手を入れましたね。 ー現在は、庭に面した部屋をギャラリーにして、その奥にリビングや寝室などプライベートな部屋があるのですね。 今はそうですね。ただ、間取りはこれまでに色々と変えました。別棟でこじんまりギャラリーをやっていた時は、現在のギャラリースペースは家族がくつろぐ和室でしたし、妻がカフェを営んでいる時は今のリビングは、お店として使われていたんです。ただ、2人目の子供が生まれてカフェを休業したので、壁を設けてプライベートな空間に戻しました。ライフスタイルの変化にともなって壁をつくったり、なくしたり、自分でリフォームしています。 ーご自身でリフォームされているのですか!? はい。すごく楽しいですし、部屋のイメージが膨らむと、作業する衝動にかられて止まらなくなるんです(笑)。でも、あくまでも自由に気楽にやっています。リフォームした空間に“味”が出ればいいなと思って取り組んでいます。
ーもしかして家具もDIYされていますか? ダイニングにある家具はDIYしたものが多いですね。テーブルや椅子、棚、ベビーチェアは僕がつくりました。日曜大工レベルですけどね。 ーギャラリーはプライベートな空間とは完全に切り離しているんですね。 今のところギャラリーはあくまでも作品を展示して販売する場所で、毎週水曜日と木曜日に開けています。常連さんから、ガイドブックを見た観光客の方までいらして頂いています。 ーその他の日は作陶をされているんですか? はい。アトリエにこもって制作しています。でも考えごとをしたり、本やネットを見ながらアイデアを練るのは、ダイニングが多いです。アトリエでは、とにかくどんどん作品をつくるので、ゆっくり考えている時間はないですね。なので、制作から離れた時間は、ダイニングにいることが一番多いです。
作品、キャリアのこと ーそもそも沖縄で陶芸をはじめたのはなぜですか? 僕は長野出身なのですが、沖縄県立芸術大学に入学したことをきっかけに沖縄に移住しました。実は、大学では陶芸ではなく彫刻を専攻していたんです。卒業後はそのまま大学に残り彫刻科で助手として働いていました。ただ、なんとなく学生の頃から陶芸に興味があったんですよね。 ーなぜ彫刻家から陶芸家に転身されたのでしょうか? きっかけは、大学を退職して海外で1年暮らしたことです。沖縄出身の妻と結婚した時に、沖縄から出たことのなかった彼女を連れて海外に住んでみたいと考えて、知り合いのいるドイツの大学にポートフォリオを送ってみたんです。そうしたら、ゲストスチューデントとして来てみないかと声をかけてもらって、それでドイツで暮らしました。でも、ちょうど1年経ったころに、沖縄に戻って陶芸をやろうって自然と思ったんです。沖縄にいた時は、なかなか陶芸家に転身するタイミングを掴めなかったのですが、海外暮らしをはさむことで、心機一転、新しいことをはじめてみようという気持ちになりました。
ー沖縄に戻ってからすぐに作陶をはじめたのですか? はい。でも最初は何をすればいいかわからず、土を買ってみよう、ろくろを買ってみよう、窯をもらってきたので焼いてみよう、釉薬っていうものをかけなきゃならないな、でもどうやって作ればいいのだろう……と、試行錯誤の連続でした。それが、徐々に形となって卸し先も見つかってきて、自分らしい作品になってきたのは、3、4年前からですかね。 ーパステルカラーの大小のドットや、細かい手書きの模様、手捻りの独特のフォルムなど、まるでアート作品のような器の数々が印象的です。作品のインスピレーションはどこから来ているのですか? 僕の作品は、化粧土に顔料を混ぜて焼くのことが多いのですが、何度も繰り返し焼いていく中で技術的なことは身につけました。でも、今までにあるものと同じでは面白くないと思い、スペインを歩いた時に見た風景や、友人の家にあったインドのラリーキルトなど、本当に色々なものからインスピレーションを得て、作品に取り入れています。
やりたいこと、夢 ー最近、器づくりの中でチャレンジしていることはありますか? 石を土に練り込んだ単色の作品をつくっています。カラフルなだけじゃなくて素材感を大切にした作品です。自分が好きで買ってきたアンティークカトラリーと相性のいい器が欲しいと思ってつくりはじめました。もともとお店の名前の「ボノホ」は「僕のほしいもの」の略なので、自分が欲しいものをつくり続けています。 ー今後の夢を教えてください。 夢はその時々で変化していますが、いまはとにかく作品をつくり続けたいです。常連のお客様もいたり、色々な展示会に参加したり、全国のセレクトショップにも卸し先が増えてきているので、シンプルにこれを長く続けていきたいです。あとは、ここの部屋を全部スケルトンにして一から完全にリフォームしたいです。お風呂やトイレもつくり直して。そして、今ある部屋は完全に自宅にして、庭に自宅とは別に一軒、ギャラリーを建てたいです。
ー作品はもちろん、部屋の変化も楽しみです!最後に佐藤さんにとって「部屋」とは? 自分が「いたい場所」であると同時に当たり前に自分が「居る場所」でもあります。プライベートも仕事もここにあるので。ときには1週間外に出ていない……なんて時もあるんです。だからこそ、自分の住みたい部屋に自分でリフォームしてきましたし、これからも手を入れつづけていきたいです。
photo /Wataru Oshiro text/Ai Tanaka composition/iD inc.
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